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「ひかりは北へ」

桜木町駅には、何かの用事で歩いたついでに利用することが多い。
ホームに立つと、位置についてから思い出すのが乗車位置のタイルだ。右に東北新幹線、左には陸蒸機が描かれる。なんともひょうきんで可愛らしい目鼻口まで付いている。従来の停車位置にこのタイルが点々と残っているのだが、現在は黄色い点字ブロックに敷かれてしまい、お役は御免となっている。面の半分ほどかぶさっているものなど、どうにもはっきりしないものばかり。それならいっそ痕跡ごと無くしてくれた方が、なにかとこちらの動揺も治まるが、チラチラと半分ほど見えるというのはどうにも煽られて体によくない。
思いきってこの際、残っているのを探して撮っておこうとホームの端から端まで歩いた。すると辛うじて確認できる、比較的状態の良いものが見つかる。200系新幹線電車のグリーンがやや色落ちしているが、分からない程ではない。
汽笛一声新橋を離れて、かつて横浜駅があった桜木町駅まで、鉄道発祥の地を元気にアピールする隣りの陸蒸機くんとともに、東北新幹線開業35周年の年を祝いたい。

2017年9月9日 京浜東北線・根岸線・横浜線 桜木町駅

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気になる「浜」の字

横浜市民だからかもしれない。日頃、「浜」の字をよく目にする。
そんな「浜」だからこそ、気になるというのが、この琺瑯引きの文字である。
おそらく、教わった書き順が違うのかもしれない。
まずは、さんずいを書く。次に旁の1画目を右から左下に短くはらう。ここで目の前の「浜」は、そのハライの収筆から右に向かって横一文字を引いている。
本来なら2画目の線は、1画目の最後につなげて上から下に線をおろすはずである。出来上がりは「丘」になるはずだが、それをわざわざそうしなかったのは、上下にわずかな隙間を作ることで、版下の加工になにか良いことがあったからか、とも考えてみる。
文字の版下は、文字全体に対して縦画と横画に分類し、縦画用に1枚、横画用に1枚といった具合でフィルムをカットして作る。そのため、効率よく仕上げる工夫がどこかにあったかもしれない。
しかし、それを上回る予想は、携わった職人の書きクセではなかろうか、ということである。この線が色濃くにじんでくるのだが、他にもないか探してみよう。

2017年9月7日 大宮駅 京浜東北線1・2番ホーム階段

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遠鉄バスのかわいいピンポン

旅先で見つけたと教えてくれる友人がいて、まさかそう簡単に見られる訳はないと思いながらも、東海道本線の天竜川駅から歩いて大通りに出て、そのまま来たバスに乗って浜松駅を目指した。
そんなに都合のいいことは・・・と言いながら車内の窓辺を見ると、友人の教えてくれたイラスト付きのピンポンが目に留まる。眼鏡をかけた運転士さんが笑顔で「ありがとうございました」と片手を挙げて挨拶している。まさにこれを見たかった訳だが、あまりに突然のことで思わず挙動不審になってしまう。お蔭で本物の運転手さんに、走行中は立たないようにと注意される始末である。
なんとか無事に撮り終え、浜松駅で下車してバスの外観を眺める。「超低床バス 人・まち・環境にやさしいオムニバス」と側面に書いてあった。最新の機能をいろいろ搭載したバスであったような気もするが、こんなに世代のギャップを感じる押しボタンが付いているとは、外見からではなかなか想像がつかない。

2017年8月5日 遠鉄バス

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北の大地の琺瑯引き

ノロッコ号で塘路(とうろ)駅から折り返す。引き続き乗り込んで、望遠レンズに替えて待った。
観光ガイドさんが「のろのろ走るからノロッコ」と言っているのを聞いて、安心してはいけない。わりにスピードを出す、緑色のディーゼル機関車である。
釧路湿原を縫い、だんだんと駅が迫ってきた。窓から構える。なかなか駅名標の近い位置に停まってくれないのはいつものことである。
レンズの先には北海道の定番、国鉄末期に設置された縦型の琺瑯(ほうろう)引き駅名標だ。紺地に白文字、ひらがなの書体はすみ丸ゴシック。下にはサッポロビールの広告が入る。いかにも北海道らしい。分かっていても見たくなるご当地のかたちだ。
書体はJR東海の駅名標に受け継がれるが、そのルーツの一端がここにある。琺瑯は寒冷地にもよく耐え、まだ各駅にしっかり残っている。なんとか永らえて欲しいものだ。

2017年7月20日 釧網本線 細岡駅

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大阪市営地下鉄に、競馬ニホン。【追記あり】

大阪市営地下鉄のホームに来たら、見逃せないのが「競馬ニホン」の広告である。
「競馬ニホン」は、手元にある昭和50年当時の本町駅を撮ったモノクロ写真にも載っている。40年以上前からある広告だ。一体、どなたが描いているのだろう。レースで競っているとは思えない飄々としたジョッキーの表情が魅力だ。蹴り上げる砂煙がポイントで、古い写真にもモクモクとした線がある。画風が変わっていない。

目をタイトルに転じて、日本を「ニホン」と読むか「ニッポン」と読むかは分かれるところだが、法律では明確な定めがないそうだ。昭和9年に「放送用語並発音改善調査委員会」が「正式な国号として使う場合は、『ニッポン』。その他の場合は『ニホン』と言ってもよい」という方針を決定している。広辞苑では、「古来ニッポン、ニホンと両様に読まれる。ニッポンの方が古いが(略)」とあった。
そう言えば、大阪市営地下鉄は日本橋(にっぽんばし)駅と読む。近鉄も同じだ。

いろいろ考える楽しみを与えてくれる広告だが、写真を撮ったら偶然駅名標が写り込んだ。西梅田駅は和文に見出しゴシックMB31を使う。旧サインのもので、今後刷新が進めば、ヒラギノUD角ゴシックに変わっていく。

2017年6月10日 大阪市営地下鉄 四つ橋線 西梅田駅

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参考:NHK放送文化研究所
https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/research/002.html


【追記】2017年8月5日

その後、イラストを描いている方のことが気になり、ご迷惑になることを承知で「競馬ニホン」さんに問い合わせた。すると、大変に丁寧な回答をいただいた。

やはり以前、同様のことを調べたことがあったそうである。
早速、「探偵!ナイトスクープ」並みのワクワク感(筆者は番組が好きである)をもって回答文を読んだ。

「競馬ニホンの大阪市営地下鉄駅構内の看板は、数十年ほぼ同じタッチのイラストが入ったシンプルなデザインを保っております。
数年前、弊社でもこのイラストの原画を描いてくださった方と連絡が取れないものかと、看板を取り扱いの広告代理店に探していただいたのですが、残念ながら連絡先がわからないとの事でした。代理店の方によるとプロのイラストレーターではなく、代理店とお付き合いのある方が描いたのだそうです。ご期待に沿えず申し訳ございません」

というものだった。がっかりするどころか、むしろ絵心のある人特有のはにかみのようなものさえ感じ、かえっていっそうイラストに愛着を持った次第である。もしいつか、直接お会いすることが叶ったなら、伺える範囲で構わない、じっくり耳を傾けたいと思う。

さらに、この広告を取り巻く現在の状況についても、「競馬ニホン」さんは丁寧に書き添えてくださった。

「弊社看板はもともと駅構内のゴミ箱上に設置されていましたが、時代の流れと共にゴミ箱の数が減少。ゴミ箱が減った分の広告を壁面や花飾りの上、柱などに設置しておりましたが、今年の3月31日付けで地下鉄構内の看板付きゴミ箱が看板なしの分別ゴミ箱に全取替えとなり、駅構内の弊社広告はだいぶ減りました」

たしかに、昭和50年当時の写真も、ゴミ箱上の掲示スペースに広告が貼ってある。
そうかなるほど、だから現在はベンチ横に佇むようにさり気なく掲げられていたのか。この状況で良く残ってくれた、嬉しいと思うと同時に、しぶといとも思った。このしぶとさが、観る者を惹きつけ、さらにいっそうファンにしてしまうのである。分かっているなあと手前勝手に喜びながら、大阪に向かう際にはまた寄ってみよう、そしてイラストが健在であることを確認し胸をなでおろし、さらにエールを送ろう。心からそう思った。

明覚駅のホーロー引き

明覚、明覚駅・・・と聞いて思い出した。琺瑯(ホーロー)引きの柱用乗場案内標のある駅である。しかも、楷書体だ。
これまで、列車が停車するわずかの間になんとか撮影していた。それが友人の演奏会がきっかけで下車することになった。これはチャンスである。

2017年6月11日 八高線 明覚駅

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このした でんき あぶない!

有言実行で、ふたたび四国へ。といっても奥深くに分け入れないのは毎度のことだが、とにかくもう一度来られた。
屋根のない跨線橋を渡って向こう側へと思ったところで、橋の上にこんな看板を見つける。黄色地に黒文字、強調したいところは赤色に、男の子が「ビリビリ」とした様をよく演じている。省略と強調の妙技が注意を喚起する看板の見どころだ。目のバッテンが昭和風の味わいという声も聞かれたがその通りとおもう。目は、鳥の足跡を向かい合わせにしたようなぎゅっとつぶった形もあるが、バッテンはより省略が効いている。痛そうだし、つらそうだ。早く手当てしてあげたくなる。
鴨川駅は電化区間で架線を通している。そのため、橋桁と架線が接近しており、「このした でんき あぶない!」なのだろう。金網が高いので、そこまで電気に触れることはなさそうだが、過去に何かあったのかもしれない。

2017年5月1日 予讃線 鴨川駅

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四国へ。

といっても四国の入口をうろうろして引き返してきている。もっと奥へと進んでいきたいが、時間とお金に限りがある。次回こそはと心に決めて宇多津駅を後にした。
しばらく乗って下車した琴平駅では改修工事の真っ最中だった。ホームの上家の板を取りはずしてはバーン、バーンと床に並べていく。新品の駅名標はビニールの被さったまま屋根に取り付けられていた。時折風でバサバサと鳴る。どうやら新しいものは駅名が角ゴシック体のようだった。従来の丸ゴシック体が四国らしいように感じていただけに、替わってしまうのは少々惜しいような気がする。

2017年1月24日 予讃線・本四備讃線 宇多津駅

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Appendix

プロフィール

中西あきこ

Author:中西あきこ
フリーライター。
レトロ感覚あふれる鉄道の看板や書体・フォントを探して、取材をつづけています。

WORKS

『鉄道ジャーナル』(鉄道ジャーナル社)
2014年6月(NO.574)~
「されど鉄道文字」連載。
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◆ お知らせ ◆
『されど鉄道文字 駅名標から広がる世界』(鉄道ジャーナル社:発行 成美堂出版:発売)を書きました。
詳しくは下記をご覧ください。

されど鉄道文字
(鉄道ジャーナル社ホームページ)

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