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日ノ出町駅のタイル絵

ホームに電車が滑り込んだあたりで、車窓左側にかすめるものがあった。なんというか、ごちゃごちゃっとした輪郭のはっきりとしない、それでいて、なにやら意思のある残像だ。
ドアの開いたと同時に電車から降りた。架線を見上げると、上屋を支える骨組みがアーチを描く。これは今どき珍しいなかなか凝った意匠ではないか。匂う、匂うと思ってホームを眺めると、目に飛び込んできたのは先ほどの残像の正体である。タイル絵だ。
京急線の路線区域を網羅する地図である。カニの足のように出っ張る地形は三浦半島で、ギザギザと右上にむかって腕を伸ばすのは横浜や鶴見、川崎の京浜工業地帯沿岸である。これはタイルで表現するのに相応しい凸凹具合である。
近づいてみると、黒い点が一つある。これはと地図を検索してかざしてみると、日ノ出町駅の位置と符合する。なるほど、我ここにあり、駅にいる私の現在地であった。

2018年5月12日 京浜急行電鉄本線 日ノ出町駅

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筆文字のひらがな/されど鉄道文字PLUS(26)

鉄道ジャーナル6月号に掲載です(4/21発売)。どうぞよろしくお願い致します。

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「あゝ上野駅」

昭和39年の流行歌「あゝ上野駅」の歌碑である。
JR上野駅の広小路口をでるとすぐの場所に建っている。かなり目立つ位置にあり大きさもそれなりだが、賑わいに紛れてしまい、言われないと立ち止まって見ないようなのが惜しまれる。集団就職で上野駅に降り立った多くの若者の気持ちに寄り添い励まし勇気づけた歌を、縁の深いこの上野駅の入り口に刻み残しておこうとする熱い気持ちが、建立の由来から伝わる。
その由来文の左隣には、当時の写真が添えられている。ここに駅名を表示した掲示器が写っているが、これはどうも丸ゴシック体にも見えるが、どうだろう。すみ丸角ゴシック体以前だとすると、昭和30年代前半にあたるが、あながち間違いにも思えない。なにぶんにも文字の輪郭がもう一つはっきりしないので、なんとも言えないが、もしかするとである。
ああ、上野駅。立ち寄りたい観察ポイントがこの碑にあることを、歌と合わせて忘れないでおきたい。

2018年4月14日 JR上野駅 広小路口

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乗車位置の案内札

札幌駅のホームには、時折り、天井の空いたところから雪が舞い込んでくる。手がかじかむ。指が硬くなり動かしにくい。そうなると、ベースキャンプのロッテリアに一旦戻る。ほぐしてから、ふたたびホームに向かった。
北海道では低気圧の接近で、列車も人も立往生していた。しきりに放送が流れる。どこで列車は止まっているのか、どこの線路上に倒木が起きたのか、どの駅付近の架線に飛来物が引っ掛かったのかを伝える。しばらく、事態が好転することはなさそうだ。無駄足と分かっていても、とにかくホームへ戻った。
札幌駅の放送では、列車の乗車位置を示した表示を「案内札」と呼んでいる。そしてその前でお待ちくださいと言う。頭の少し上に列車名と列車種別と号車番号を書いた札が上下をワイヤーに引っ掛け取り付けてある。色とりどり、様々の札がある。随分前の、上野駅や東京駅、新宿駅や大宮駅の様子を思い出した。足元に書かれるより、じつはこちらの方がずっと馴染みがある。子供だと高い位置で少し見づらいかもしれない。しかし、足元にあるより、メンテナンスしやすく、取り換えも容易で、便利ではないかと思っている。括りつけられたものが落ちてきたという話も聞かないから、そうした心配も少ないかもしれない。
それが、5面あるホームに必ずと言っていいほど下がっている。案内札も、札幌駅らしい眺めを作るものだなと思った。
それにしても、もうすぐ3時間になる。列車はなかなか、乗車位置へ現れそうにない。

2017年12月25日 札幌駅ホーム

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砂箱の砂は。

筆書きの「砂箱」「新さっぽろ駅」が目に入った。
ホームの隅にひっそり置かれている。どこか、路傍の馬頭観音か道祖神のようでもある。
砂箱は冬の北海道に欠かせない。つるつるとした路面にまく滑り止めの砂を入れておく。私たちの足元を守る、身の安全のより所だ。
けれども、地下鉄のホームにも凍結用に準備して置いてあるとは知らなかった。冬の厳しさが伝わってくる。

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2017.12.24 札幌市営地下鉄東西線 新さっぽろ駅

謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
小さいところを覗いていたら、意外にも広い世界へ通じる入り口だったのだなあということを書いて旅してまいります。
みなさまのご健康を心からお祈りいたしております。

2018年元旦 中西あきこ

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「ひかりは北へ」

桜木町駅には、何かの用事で歩いたついでに利用することが多い。
ホームに立つと、位置についてから思い出すのが乗車位置のタイルだ。右に東北新幹線、左には陸蒸機が描かれる。なんともひょうきんで可愛らしい目鼻口まで付いている。従来の停車位置にこのタイルが点々と残っているのだが、現在は黄色い点字ブロックに敷かれてしまい、お役は御免となっている。面の半分ほどかぶさっているものなど、どうにもはっきりしないものばかり。それならいっそ痕跡ごと無くしてくれた方が、なにかとこちらの動揺も治まるが、チラチラと半分ほど見えるというのはどうにも煽られて体によくない。
思いきってこの際、残っているのを探して撮っておこうとホームの端から端まで歩いた。すると辛うじて確認できる、比較的状態の良いものが見つかる。200系新幹線電車のグリーンがやや色落ちしているが、分からない程ではない。
汽笛一声新橋を離れて、かつて横浜駅があった桜木町駅まで、鉄道発祥の地を元気にアピールする隣りの陸蒸機くんとともに、東北新幹線開業35周年の年を祝いたい。

2017年9月9日 京浜東北線・根岸線・横浜線 桜木町駅

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気になる「浜」の字

横浜市民だからかもしれない。日頃、「浜」の字をよく目にする。
そんな「浜」だからこそ、気になるというのが、この琺瑯引きの文字である。
おそらく、教わった書き順が違うのかもしれない。
まずは、さんずいを書く。次に旁の1画目を右から左下に短くはらう。ここで目の前の「浜」は、そのハライの収筆から右に向かって横一文字を引いている。
本来なら2画目の線は、1画目の最後につなげて上から下に線をおろすはずである。出来上がりは「丘」になるはずだが、それをわざわざそうしなかったのは、上下にわずかな隙間を作ることで、版下の加工になにか良いことがあったからか、とも考えてみる。
文字の版下は、文字全体に対して縦画と横画に分類し、縦画用に1枚、横画用に1枚といった具合でフィルムをカットして作る。そのため、効率よく仕上げる工夫がどこかにあったかもしれない。
しかし、それを上回る予想は、携わった職人の書きクセではなかろうか、ということである。この線が色濃くにじんでくるのだが、他にもないか探してみよう。

2017年9月7日 大宮駅 京浜東北線1・2番ホーム階段

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Appendix

プロフィール

中西あきこ

Author:中西あきこ
フリーライター。
レトロ感覚あふれる鉄道の看板や書体・フォントを探して、取材をつづけています。

WORKS

『鉄道ジャーナル』(鉄道ジャーナル社)
2014年6月(NO.574)~
「されど鉄道文字」連載。
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◆ お知らせ ◆
『されど鉄道文字 駅名標から広がる世界』(鉄道ジャーナル社:発行 成美堂出版:発売)を書きました。
詳しくは下記をご覧ください。

されど鉄道文字
(鉄道ジャーナル社ホームページ)

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